2022年11月、京都の紅葉だより(2)
こんにちは、京扇子の白竹堂です。享保3年、1718年から京都で扇子屋を営んでおります。
11月も今日で終わります。今年も残すところあと1ヶ月……というのは少々紋切り型の言葉ですが、やはりこの時期は、毎年「もうあと少しで今年も過ぎるなあ」と感じます。
紅葉も盛りを過ぎ、少し寂しくなってきました。しかし、散り際の紅葉もまた風情があるもの。前回に引き続き、今回も京都の紅葉の様子をお伝えします。
知る人ぞ知る古刹のお庭の紅葉を見に
今回訪れたのは、京都市左京区にある栄攝院(えいしょういん)さん。「くろだにさん」の愛称で知られる金戒光明寺の塔頭寺院で、数年前から「知る人ぞ知る」紅葉の名所としてSNSを中心に知られるようになりました。
栄攝院は、徳川家康に仕え、後に彦根藩井伊家の筆頭家老となった木俣守勝が創建した由緒あるお寺です。
紅葉の時期以外は、庭園は非公開。訪れる人も檀家の方を中心とした静かなお寺です。庭園は、参道の奥の門を過ぎるとまず山の地形を活かした池泉鑑賞式庭園があり、さらに奥に行くと「京の名水」のひとつに数えられる明星井(めいせいい)や枯山水庭園があります。
普段はこれらの庭園は非公開です。しかし紅葉の時期になると、手前の池泉鑑賞式庭園や明星井のあたりまでは一般にも公開されます。特に拝観料などは必要なく、設置された箱に寸志を納める形式です。
穏やかな空気に思わず時間を忘れるひととき
この日のお天気は曇りがち。11月も終わりに近づいているため、少し肌寒さも感じました。それでも本堂の縁側に座って紅葉を眺めていると、心の中はなんとなくふんわり温かくなるように思います。
おしゃべりに興じる人はほとんどおらず、本堂の縁側に座ったり邪魔にならないところに佇んだりして、紅葉を見たり、カメラや動画を撮ったりして過ごしていました。
紅葉を眺め、その場の雰囲気を楽しんでいるうちに、ふと気づくと30分くらいがあっという間に経っていました。もしかしたら、これほど静かに紅葉を楽しめる場所はあまりないかもしれません。
賑やかな紅葉も良いのですが、このように静かに楽しむ紅葉も、また良いものです。
京都には、栄攝院のようにふらりと誰もが立ち寄れるお寺も多くあります。建物案内のパンフレットなどもなく、御朱印やお守り等の授与もされていないことが珍しくありません。
このようなお寺には、観光客目線でなく、お寺の様子を垣間見させていただくくらいの、気軽かつ少し礼節を意識した気持ちで訪れると、ちょうどいいかもしれません。普段着の京都の姿がなんとなく見えてくるのではないでしょうか。